中国の電力業界について
業界再編はここ数年で大きく進展
中国の電力業界は2002年12月29日に実施された改革で電力市場の50%以上のシェアを独占していた国家電力総公司が、発電、送電、補助事業の3つの分野に分割され、合計11社へと再編されました。さらに分割された企業に小規模企業を注入すると言う形で更なる再編がすすんでいます。
中国の電力会社主要5社
今回は発電部門の大手5社について見ていきます。現在、発電5社の中国華能、中国大唐電力、中国華電、中国電力投資、中国能源のすべてが子会社を香港市場に上場しており、外国人投資家でも株を購入することが出来ます。
中国華能(ファネン)
中国大唐電力(ダタン)
中国華電(ファディエン)
中国電力投資
中国能源
■ 発電容量 | 17,657万キロワット(6%増)
水力 2,607(23%増)
火力 12,869(1%増)
風力 1,863(14%増)
太陽光 318(102%増)
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■ 発電量 | 7,026億キロワット(13%増) |
■ 売上高 | 2,786億元(13%増) |
■ 利益総額 | 144億元(3%増) |
■ 総資産 | 10,733億元(7%増) |
■ 子会社 | 華能国際電力(香港市場上場) |
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概要
中国最大手。発電の内訳は約8割が火力で、水力、風力とつづきます。発電事業のほか石炭採掘、金融、物流、情報技術、再生エネルギー事業なども手がけます。2008年3月にはシンガポールの3大電力会社の一角であるデュアス・パワーをシンガポール政府持株会社テマセクから約30億米ドルで買収しています。
子会社である華能国際電力は華中、華北、東北、華南地域など中国東部地域を中心に全国21省・直轄市・自治区を営業エリアとしています。
2016年度の業績
2016年度の発電容量は16,554万キロワットで、2014年度と比べて全体で9%伸びています。どの発電源も2014年度比で伸びていますが、風力(41%増)と太陽光(84%増)が大幅に伸びていることがわかります。風力は大幅増により水力に迫る勢いです。ただし発電量自体は6216億キロワットで、2014年度比で4%減少しています。
また業績も売上げは2461億元で16%減少し、利益も139億元で49%と大きく減っています。これは景気減速による需要の伸び悩みや燃料価格の高騰などによるものだとみられています。
2018年度の業績
中国華能の2018年度の発電容量は17,657万キロワットで、2016年と比べて6%伸びています。発電減別にみるとどれも2014年度比で増加していますが、火力が1%増と微増なのに比べ、水力は23%、風力は14%と大きく伸びています。中でも太陽光が102%増と大きく増加しています。発電量自体も7026億キロワットで、2016年度よりも13%伸びています。
業績は売上が2786億元で13%増なのに対し、利益は144億元で3%増と微増にとどまっています。
■ 発電容量 | 13,891万キロワット
火力 9,445(67%)
水力 2,703(19%)
風力 1,631(11%)
太陽光 116(0.8%) |
■ 発電量 | 5,541億キロワット |
■ 発電所 | 33ヵ所 |
■ 売上高 | 1,895億元 |
■ 利益総額 | 61億元 |
■ 総資産 | 7,458億元 |
■ 子会社 | 大唐国際発電(香港市場上場) |
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概要
5大電力会社の一角。発電はその大部分が火力に依存しています。子会社である大唐国際発電は北京、天津、唐山など中国の寒冷な北部地域を営業エリアとしています。
2015年度の業績
2015年度は発電容量が12,717万キロワットと5.5%増加しています。その内訳では火力の割合が74.70%から72.11%に減少し、水力は16.43%から18.01%、風力は8.35%から9.35%へと上昇しています。売上高は前年度比で13%減の1,662億元と大きく減らしていますが、利益は23%増の173億元と増加しています。
2018年度の業績
2018年度も総発電容量は13,891万キロワットまで増えています。電源の割合は火力が72%から67%へと減少する一方、水力は18%から19%に、風力は9%から11%に増えています。水力は風力などの自然エネルギーの割合を増やしていく方針というのは変わっていないようです。
■ 発電容量 | 14,692万キロワット
水力 2,697
火力 10,405
風力とその他 1,589 |
■ 発電量 | 5,123億キロワット |
■ 売上高 | 2,152億元(8.5%増) |
■ 利益総額 | 249億元 |
■ 総資産 | 7,984億元 |
■ 子会社 | 華電国際電力(香港市場上場) |
■ 特徴 | 5大電力会社の一角。子会社である華電国際電力は山東省や安徽省、内モンゴルなど中国西部、北部地域などを営業基盤にしています。 |
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概要
5大電力会社の一角。子会社である華電国際電力は山東省や安徽省、内モンゴルなど中国西部、北部地域などを営業基盤にしています。
2017年度の業績
中国華電集団の発電容量などのデータは2017年度の物しか確認できなかったため、今回は2017年度のデータを掲載しました。中国華電集団では総発電容量の39.5%が水力や風力、太陽光などのクリーンエネルギーとなっています。
■ 発電容量 | 14,487万キロワット
火力 6,864
水力 2,394
風力 1,741
太陽光 1645
核 697 |
■ 発電量 | 3,969億キロワット |
■ 売上高 | 2,266億元 |
■ 利益総額 | 65億元 |
■ 総資産 | 10,813億元 |
■ 子会社 | 中国電力国際発展(香港市場上場) |
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概要
5大電力会社の一角。火力発電が中心ですが他の4グループと比較すると水力や太陽光発電が高いのが特徴です。子会社である中国電力国際発展は河南省、安徽省、山西省、湖南省、貴州省などを事業エリアとしています。水力発電は火力発電とは違い自然エネルギーなので、資源価格の影響うけにくく、収益の安定化にも寄与します。
2016年度の業績
2016年は2014年度と比べて発電容量は11,663万キロワットとは増加していますが、火力は7145万キロワットで65.51%から61.26%に、水力は2159万キロワットで21.42%から18.51%へと比率が下がっています。一方風力は1251万キロワットで6.90%から10.72%に、太陽光は856万キロワットで3.85%から7.33%と大きく伸びています。また原子力も447万キロワットで2.32%から3.83%と増加傾向にあります。
2018年度の業績
2018年度も発電容量は14,487万キロワットと大きく伸びています。その中で大手電力会社の中でも唯一火力発電の割合が47.38%と、50%を割っています。水力1741、風力2394、太陽光1645と自然エネルギーだけで5780万キロワットで、39.89%を占めています。核も697万キロワットとふえています。
■ 発電容量 | 23,800万キロワット
火力 18,000
水力 1,867
風力 3,829
太陽光 131 |
■ 発電量 | 9,533億キロワット |
■ 売上高 | 5,423億元 |
■ 利益総額 | 509億元 |
■ 総資産 | 17,828億元 |
■ 子会社 | 龍源電力(香港市場上場)
国電電力(上海A株市場上場) |
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概要
5大電力会社の一角。子会社の龍源電力は東北地方の3勝と、内モンゴル自治区、甘粛省、河北省、新疆ウイグル自治区、江蘇省、福建省などを営業エリアとしています。風力発電容量では国内首位で、世界でも2位の規模を誇ります。
2016年度の業績
2016年度の発電用ようは14,248万キロワット、発電量は5,052億キロワットに上ります。売上高は1,828億元で、利益総額は131億元です。
2017年に
中国国電集団は2017年8月28日に、石炭生産で中国最大手で発電事業も手掛ける神華集団と合併し、社名も国家能源集団に代わりました。これにより資産規模で見ても世界2位の巨大なエネルギー企業が誕生することになります。
2018年度の業績
神華集団と合併したことで2018年度の売上も5,423億元、発電量も9,533億キロワット、発電容量も23,800万キロワットと、それまで横並びだった大手5社の中では1歩抜けた存在となりました。電源では火力の割合が高く、次いで風力発電容量が多いのが特徴です。
グループ全体の情報を調べるには
五大電力グループは各社とも多くのグループ会社から形成されています。そのうちの一部の子会社が香港市場で上場しているので、子会社への投資は可能ですが、グループ全体への投資は市場に上場していないため出来ません。香港市場に上場している子会社の発電量や売上高、利益などの業績は市場に上場しているので比較的情報を入手しやすいのですが、グループ全体だとグループのホームページなどで情報を収集することになります。
発電容量や売上、利益などは最新の情報を掲載しているところもあれば、1,2年前のものしか掲載されていないところもあります。各社のデータでは2017年のものと2018年のものが混在しているのは、こうした理由によります。
各社のエネルギー源の比率
火力が約7割を占める
中国の電力会社の主力の発電源といえばまだまだ火力発電です。大手の多くは火力発電が約7割ほどを占めています。ただし年々その割合は低下傾向にあります。そんな中、中国電力投資だけはすでに火力発電が全他の5割を切っています。その分水力や風力、太陽光などの自然エネルギーの比率を高めているようです。
風力・水力、太陽光の比率が上昇
近年は総発電に占める火力の比率が徐々に下がっきています。一方で風力や水力、太陽光といった再生可能エネルギーの比率が上昇しています。以下は風力と水力、太陽光を合わせた再生可能エネルギーの2018年度の各社の発電容量と全体に占める割合の表です。発電容量も割合も多いのが中国華電と中国電力投資で、その比率は全体の39%に相当します。他の3社も24〜32%ほどの比率を占めています。
風力・太陽光の各社の発電容量と比率(2018年)
| 発電容量 | 比率 |
中国華能 | 4,788 | 27.11% |
中国大唐 | 4,4501 | 32.03% |
中国華電 | 5,846 | 39.50% |
中国電力投資 | 5,780 | 39.89% |
国家能源集団 | 5,827 | 24.48% |
中国の総発電容量の推移と発電源の内訳
発電源の大部分は火力発電
中国華能、中国大唐、中国電力投資などの発電に占める各電源の内訳をみると火力が最も多く、次いで水力、風力、太陽光、核と続きます。一方中国全体の総発電量に占める電源比率を見てみると、やはりこちらも火力が最も多く、次いで水力、原子力となっています。風力は原子力よりはやや少ないものの同程度の規模はあるようです。太陽光は400億khwほどでほかの電源と比較するとまだまだその規模は小さいですが、近年高い成長率を維持しています。
総発電量は年々増加
中国全体の総発電量は毎年増加しています。というのも需要が毎年拡大しているためです。そんな中近年は火力の伸びが頭打ちとなっています。今後の総発電量の伸びを維持していくためには水力や風力、太陽光、原子力といったその他の電源の開発が重要となってくるのではないでしょうか。
2016年度の発電容量は?
2016年度の総発電量も前年度比で5.6%と順調に拡大しています。火力の比率がやはり高いですが、その比率も徐々に減少しています。前年度比で28%増と大きく伸びたのが原子力発電です。原子力も風力もここ数年で大きく伸びていますが、それ以上の勢いで大きく伸びているのが前年度比で79.2%増の太陽光発電です。
2018年度の発電容量は?
火力発電も水力発電も全体の約8割を占め、発電容量も伸び続けていますが、5年前には9割以上を占めていたのが、今や8割を切っています。代わりに伸びているのが風力や原子力、太陽光発電です。太陽光発電はほんの5年前には全体の1%程度だったものが、今や9.1%で約1割を占めるまでに拡大しているのです。
原子力発電については大量の電力を賄えるイメージですが、中国全体で見ると全体に占める割合が1%から2%とここ数年でもほかの電源に比べると、それほど大きく伸びていません。
発電容量と電源比率の推移
年度 | 総発電容量(万kW) | 火力(万kW)(%) | 水力(万kW)(%) | 原子力(万kW)(%) | 風力(万kW)(%) | 太陽光(万kW)(%) |
2013 | 124,738 | 86,238 (69.1%) | 28,002 (22.4%) | 1,461 (1.1%) | 7,548 (6.0%) | 1,479 (1.1%) |
2014 | 136,019 | 91,569 (67.3%) | 30,183 (22.1%) | 1,988 (1.4%) | 9,581 (7.0%) | 2,652 (1.9%) |
2015 | 150,828 | 99,021 (65.7%) | 31,937 (21.1%) | 2,608 (1.7%) | 12,934 (8.5%) | 4,318 (2.8%) |
2016 | 164,575 | 105,388 (64.0%) | 33,211 (20.1%) | 3,364 (2.0%) | 14,864 (9.0%) | 7,742 (4.7%) |
2017 | 177,703 | 110,604 (62.2%) | 34,119 (19.2%) | 3,582 (2.0%) | 16,367 (10.3%) | 13,025 (7.3%) |
2018 | 189,967 | 114,367 (60.2%) | 35,226 (18.5%) | 4,466 (2.3%) | 18,426 (9.6%) | 17,463 (9.1%) |
発電量で見ると比率は異なる
ここまでは各電源の発電容量を見ていきましたが、実際の発電量でみると電源ごとの割合も異なります。天候に左右されない火力や原子力は発電量でみると発電容量の時も全体に占める割合は高いです。一方風力や太陽光は、天候に左右されやすいこともあり、発電量で見た時の全体に占める割合は、発電容量の時よりも小さくなります。
発電量と電源比率(2018年)
年度 | 総発電量(億kWh) | 火力(億kWh)(%) | 水力(億kWh)(%) | 原子力(億kWh)(%) | 風力(億kWh)(%) | 太陽光(億kWh)(%) |
2018 | 71,117 | 50,738 (71.3%) | 12,342 (17.3%) | 2,943 (4.1%) | 3,660 (5.1%) | 1,775 (2.4%) |
各航空会社の上場している市場
電力大手5社の上場市場
成長著しい中国の電力業界各社ですが、日本からでもこうした企業の株式を購入することは可能なのでしょうか。まずそれを知るには電力会社が株式を上場している市場について調べる必要があります。そこで大手電力会社がどの市場に上場しているのかを調査しました。
まず中国華能集団は華能国際電力を、香港市場と上海A株市場に上場しています。中国大唐集団は大唐国際発電を、香港H株市場と上海A株市場に上場しています。中国華電集団は家電国際電力を、香港市場と上海A株市場に上場しています。
中国電力投資集団は中国電力国際発展を香港市場に、上海電力を上海A株市場に上場しています。2017年に中国国電と神華集団が合併して誕生した能源集団は香港市場に龍源電力と神華能源が、上海A株市場には国電電力発展と神華能源が上場しています。
会社名 | 香港市場 | 上海市場 | 深セン市場 |
中国華能 | H株(00902) | A株(600011) | |
中国大唐 | H株(00991) | A株(601991) | |
中国華電 | H株(01071) | A株(600027) | |
中国電力投資 | レッドチップ(02380) | A株(600021) | |
国家能源集団 | H株(00916)、ハンセン(01088) | A株(600795)、(601088) | |
中国の電力会社の株式を購入する方法
中国の電力会社の多くは香港市場と上海市場に上場していることがわかりました。こうした電力会社の株式を買いたいならその市場の銘柄を取り扱う証券会社に口座を開設して、取引を行うといいです。上海A株市場や香港H株市場のどちらも取り扱っていて、しかも取り扱い銘柄数が多いのは内藤証券です。
中には中国電力投資傘下の上海電力や、国家能源集団傘下の国家電力発展のように上海市場でしか上場していない銘柄もあるので、上海A株、香港H株のどちらの市場にも対応している証券会社を選ぶなら内藤証券がおすすめです。
香港市場だけでなく上海、深センなどの中国本土市場も取引したいなら内藤証券がおすすめです。手数料もお得で本土B株だけでなくA株市場もネットで取引できます。特定口座は香港株、中国本土株どちらにも対応しています。
内藤証券
取扱銘柄数は香港市場は内藤証券が2000銘柄ほど、楽天証券は600銘柄ほど、上海A株は内藤証券が800銘柄ほど、楽天証券が250銘柄ほどと銘柄数に開きはありますが、手数料は楽天証券は内藤証券よりもお得です。どちらも口座開設や年会費は無料なので、両方に口座を開設しておき、欲しい銘柄が楽天証券で取り扱っている場合は楽天証券で取引するというように使い分けてもいいでしょう。
香港市場と上海A株市場での取引に対応しています。手数料は業界最低水準です。取り扱い銘柄数は内藤証券と比べると見劣りします。特定口座は香港株・上海株どちらにも対応しています。
楽天証券